学生時代はそれはもうありとあらゆるマンガを読んでいたのだが、大学を卒業して社会人になるにあたって大部分を処分した。
処分の理由は、アパートからの引越しの荷物をなんとか減らしたかったからだが、社会人になってまでマンガもなかろうと、心の中では思っていた。
大部分のマンガは古本屋に売ったり、人に進呈したりしたのだが、マンガと完全に決別するというわけではなく、経過措置として今連載されているマンガが連載を終えるまでは読もうと思っていた。また、亭主がこれまで生きて来たなかで、とくに大きく影響を受けた作家の作品は手元に置こうと決めた。
幸い?亭主の人生に大きな影響を与えるような作家は皆寡作で、手元に置く分も少なかった。
結果、社会人になってもマンガ本が増えることはなかったが、マンガとの付き合いは細々と続いた。毎週・毎月楽しみにしている作品があって、立ち読みなどでストーリーを追ったり、どこかで「この作品が面白い」などと聞きつけると、マンガ喫茶で読んだりもしていた。本もいくらかは買っていた。
結婚するということになって、やはりアパートを引き払う際にさらに大々的にマンガを処分したのだが、このときは処分するほどのものはなく、10冊程度を売ったに過ぎない。
ここ数年は、週刊誌・月刊誌で楽しみにしていた作品が次々と完結していて、いよいよ亭主とマンガとの関係は断ち切られてしまうのか―――とも思ったのだが、鋼の錬金術師が完結したのをきっかけに全巻購入してしまった上に、Hunter x Hunterも買い揃えてしまった。先日、Kindleペーパーホワイトを買った際には辛抱たまらずOne Pieceを全巻大人買いしている。
ただ、亭主とマンガとの距離は以前よりもかなり遠い。今、楽しみにしている作品は
One Piece(尾田栄一郎)
進撃の巨人(諫山創)
ジョジョリオン(荒木飛呂彦)
銀の匙(荒川弘)
ヒストリエ(岩明均)
Hunter x Hunter(冨樫義博)
くらいで、ただし最後から2つの作品は現在はほぼ連載が停滞している。
そのほかにも細かい作品をちょこちょこと買ってはいるが、一巻ないし二巻で読むのをやめている。最近の作品、面白いといえば面白いのだけれど、ずっと手元においておきたいという内容でもなく、話題作だから、話の種になるからとさっと目を通して終わりにしている。昔の亭主の熱の入れ様からすれば恐ろしいほど冷淡だ。
亭主がこれまで生きて来たなかで、とくに大きく影響を受けた作家は
紫堂恭子
高野文子
つげ義春
あたりだろうか。
紫堂恭子はファンタジー系の作品を多く発表する。亭主は代表作である「辺境警備」「グラン・ローヴァ物語」が特に好きで、「辺境警備」の主人公サウル・カダフ(通称隊長さん)、「グラン・ローヴァ物語」の主人公グラン・ローヴァ(大賢者)の飄々とした人柄に憧れる。前者は中年のおっさんとしての飄々さ、後者は歳を経ても少年のような飄々さ。彼らの生き方は周囲の人々に影響を与え、人々を成長へと導いてくれる。
高野文子は女流漫画家の大家であり、寡作ながらも人々の心に確実に届く作品を発表する。「おともだち」「棒がいっぽん」「るきさん」あたりが代表作だろうか。作品には少女、女学生、そしてオトナの女性、昭和の古くから平成まで様々な女性が登場するが、その誰もが生き生きと、自身の人生を謳歌している。ストーリ構成も巧みであり、短いながらも一つの作品に明確な主題と、結末が用意されている。
つげ義春は、亭主の青春時代(高校~大学卒業)における考え方や価値観、死生観にまで影響を与えている。「ねじ式」や「夜が掴む」「外のふくらみ」などは当時の精神状態をそのまま絵にしたような作品であったし、「無能の人」や一連の旅にちなんだ作品は当時自信を失い、存在を消してしまいたかった亭主にとってある種の疑似的な逃避体験だった。正直に言うが、今でも亭主は許されれば今の生活から消え去りたいし、どこか深山幽谷に篭って俗世との関わりを断ちたいと思っている。しかし現実には許されるはずもなく、せめての慰めにと氏の作品を読んでいる。
面白いマンガ、魅力的な画や巧妙なストーリ、あるいは作品全体から醸し出す雰囲気が好みのマンガはたくさんある。注目している作家も少なくない。しかし、自身の生き方や考え方にまで影響を与えるようなマンガや作家はそう多くはない。
社会人となって、また歳を重ねてマンガが格段に面白いと思えなくなってきても、自身に影響を与えた作家の作品だけは、いつまでも手元においておきたいと考えている。
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