浪人脱出とともにSONYのラジカセ"DoDeCaHorn CFD-75"を購入し、機嫌よく音楽を聴いていた大学生活。
たしか4年の夏だったか、亭主のアパートにサークルのOBが泊まりに来た際、「それだけCDを持っているのにラジカセなんてチャチなもので聴いてるのか」といわれた。
ムッときたかどうかはよく覚えていない。ただ次の日、アパートの近くの書店に、オーディオ雑誌を立ち読みに行ったことを覚えている。当時はどのようなオーディオ雑誌があるのかよくわからなかったので、一番厚みがあって、装丁の美しいものを手に取り、ぱらぱらと眺めた。
目に入ったのは、Accuphaseという製品のプリメインアンプ。シャンパンゴールドに輝いていて美しい。
値段を見たら35万円。
そのまま雑誌を閉じ、微妙な顔をして帰ってきた。
とても学生の亭主が買えるような値段ではない。まるでお前さんに売るものなんかありゃしないよと、店の入口で追い返されたような気分だった。
仕方が無いので次の日、秋葉原のサトームセンに行き、PioneerのSelfie A30という一番安いミニミニコンを買ってきた。イチオウ、売り場でうんうん唸って試聴して、手が出る範囲でもっともいい音がするものを選んだ。世間では宮沢りえのワイルドなセミビキニのCMで騒がれていた機種だったようだが、亭主は特に興味がなかった。
Selfie A30は当時はミニミニコンなどという製品ジャンルに含まれていた。CD、チューナー、ダブルカセットデッキ、アンプなどが見た目に4段重ね、実際には上下2段に分かれていた。本体パネルはブラック、プラスティック製で、持ってみるとやけに軽かった。なんとなく安っぽいのが気になったが、学生の身分ではこんなものだろうと割り切った。
聴いてみれば、確かにラジカセなどと比べて圧倒的に低音が出る。スコーンと抜けた音になるほどこれがラジカセと、コンポ(というかミニミニコン)との違いなのだなと、納得した。
結局A30は、会社に入って3年目くらいまで使っていたが、夏のボーナスでOnkyoのIntec 275シリーズに買い換えた。
買い換えれば買い換えるほどに音が良くなっていた、そんな幸せな時代の話だ。
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